二人は帰京すると、久美子の母・孝子にこの事を話すが、とりあってくれない。 その頃、京都へ向う寝台列車の中では、就寝していた久美子の寝顔を、そっと長めながら立ち去る伊藤の姿があった。 ヴァンネード夫人エレーヌ(彼女は、歌舞伎座で、ハンカチを落とした久美子に話し掛けた女性だった)は、夫の気持ちを推し量り、あなたは日本に残りなさいと勧める。
そんな野上にタバコの火を借りに近づいて来た男が、伊藤は来ない。 「戦争終結」を決断していれば「広島・長崎の原爆投下」も、ソ連・スターリンの阿鼻叫喚とも思える日本攻撃、「シベリア抑留」も無かったのではないか。 そして第二の事件が起きる。
5犯人は伊東に違いなかった。 その記録が日本の公文書に残っていないのは悲しいとだけしか言えない。 さらに、本書は父娘の愛情についても触れている。