そうしてその少女の 屍体 ( したい )を眼の前に横たえながら、冷静な態度で紙を拡げて写生をしていた……という、非常に特異な、不可思議な事実が曝露されまして、大評判になってからの事で御座います……が……同時に、その青年の属する一家の血統を、そんなにまで悲惨な状態に陥れてしまったのが、何の目的であったかという事実とその犯人が 何人 ( なんぴと )であるかという、この二つの根本問題だけは、今日までも依然として不明のままになっているという……どこまで奇怪、深刻を極めているか 判然 ( わか )らない事件で御座います。
のポケットミステリー、角川文庫、ちくま文庫(『夢野久作全集』)、など各社から刊行されている。 ……鼻が 尖 ( と )んがって……眼が落ち 窪 ( くぼ )んで…… 頭髪 ( あたま )が 蓬々 ( ぼうぼう )と乱れて…… 顎鬚 ( あごひげ )がモジャモジャと延びて……。 ところが不思議なことに若林博士も、私のそうした顔を、 瞬 ( またたき )一つしないで見下しているのであった。
15「私」の失われたの記憶、そしてに起こったらしい事件を巡り、二人の、とは滔々とり始めるのだった。 貴方を当大学の至宝として、大切に御介抱申上げているうちには、キット元の通りの精神意識に立ち帰られるであろう。
1……しかも私と結婚式を挙げる前の晩に、私の手にかかって殺された……そうして又、生き返った女だと自分自身で云っている。 すると間もなく、その巨大な紳士の小さな、ドンヨリと曇った瞳の底から、一種の威厳を含んだ、冷やかな光りがあらわれて来た。 そうして生き返っている妾です。
20「……イヤラッサナア……マアホンニ……タマガッタガ……トッケムナカア……ゾウタンノゴト……イヒヒヒヒヒ……」 ……そのあとから追いかけるように、私の腹の中でグーグーと胃袋が、よろこびまわる音……。 音楽:• 呉モヨ子:• 甘粕藤汰(あまかす とうた):• そう思えば思うほど高まる呼吸の音が、 凩 ( こがらし )のように深夜の四壁に反響するのを聞いていた。
3顔が馬のように長くて、皮膚の色は瀬戸物のように生白かった。 祭文というのは、語ったり歌ったりして祈る一種のお祈りの形式で、陽気な節や拍子をつけたものが多いのが特徴です。 作中作の題名ごとに何が書いてあったのか、また現実上ではなにがおきていたのかを、必要不可欠な情報量でまとめてあります。
一般に探偵小説とか推理小説とかいうものは、結末や犯人が分かることにカタルシスがあるものですが、この作品は、分からなくなることに快感がある作品。 巻頭歌 胎児よ 胎児よ 何故躍る の心がわかって おそろしいのか 『ドグラ・マグラ』とは、・の書いた 幻魔怪奇である。
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